ハングルのことわざをのぞく(十八)

 「五月の花嫁」と韓国女性はよく口にする。さあ、ゴールは間近だ。

 四柱八字の占いで結婚の日取りが決まると、花嫁となる女性は、まずウエディングドレスとチマチョゴリを仕立てる。一生に一度のことだから(?)貸衣装で済ませるということは、ほとんどない。ソウルにある通称ウエディング通りの両側には、60軒以上ものショップが並ぶ。ウエディングドレスはオーダーしてから約一ヶ月、チマチョゴリは三日ほどで出来上がる。

 式のおよそ一ヶ月前になると、いよいよ『野外撮影』をすることになる。結婚は、女性にとって人生の最高の晴れ舞台。この時ばかりはと、思いきり華やかな姿を思い出に残そうとする。朝から夕方まで、ほぼ丸一日かけて、専門業者を雇って行われる。

 『野外撮影』は、新婦が主役。こんな一日を過ごす。午前9時から化粧を始め、10時に写真スタジオ入り。そこで、ヨーロッパのプリンセスのような格好をしたり、レースのパーティードレスなどを身にまとい、何着か衣装を替えて撮影する。これで午前中は終了し、昼食後は、ソウルの観光名所・故宮・ロッテワールドなどでの、文字通り『野外撮影』に出かける。
 まず、タキシードとウエディングドレスをそれぞれ身につけた新郎新婦は、何カ所かの‘お決まりの撮影スポット’を順番に廻る。先客がいる場合も当然あり得る。徳壽宮(王宮 ソウル市庁近くの名所)などで、ウエディングドレスを着た新婦は、庭石などに座り植物を背景に撮影した後、西洋風の石造建築をバックに、回廊や階段などいろいろな場所で角度を変えながら、ポーズをとり写してもらう。それが済むと、韓服に着替え(そのためのテントが備えてある!)、今度は伝統的な建築物の前を、また何カ所か移動しながら撮影する。信じられないほどの労力と費用(最低でも100万ウォン)を注いで出来上がるのが、アイドル写真集のようなファンタスティックなアルバムである。

 このアルバムは、両家の親に贈られる。本人達が所有するのは勿論のことだが、‘お気に入り’は大きく引き伸ばされて額に入れられ、新婚家庭のリビングや寝室を飾ることになる。

 さて、やっと辿り着くゴール。結婚式自体はホテルや教会で挙げ、20〜30分程で終わる。披露宴の後、式場か自宅で韓式の伝統的な婚礼の儀式(ペベク:親族だけで行う。元々は新郎側の家族だけの出席が許されていた)を行うのが一般的らしい。礼式場は街のあちこちで見かけられる。民間のものだけでなく、大学が運営する「校友会館」、職業軍人のための軍直営のものなどがある。

 招かれた客は、新郎側・新婦側に別れた受付で記帳し、祝儀金を渡し式に参列することになる。

 まず、新郎が先に入場し、次に父親と共に新婦入場。誓い、牧師の話、両親への挨拶・・・と式は進行する。ここで、ケーキカットやキャンドルサービスなどをする場合もある。友人の余興、スピーチなどはなく、披露宴になだれ込むこともある。新郎一人で万歳三唱をするのをきっかけに、スモークが焚かれシャボン玉が飛び、ブラスバンドの演奏開始なんてこともある。まぁ、ここらへんは様々だ。団体写真を撮り、新郎新婦は披露宴もそこそこに「ペベク」を執り行う部屋へ移動。双方へのご挨拶を終え、栗やナツメを投げられ祝福される。

 日本と全く違うのが、披露宴だ。先ほど、「招待された客は・・・」と書いたが、それは挙式に招待された客という意味である。韓国では、披露宴の招待客の数を制限するなどという失礼なことはしない。列席者の数は、少なくても200〜300人といわれる。遠い親戚から近所の人までも来る。結婚するという話を聞いてやってくる人も多い。ちょっと名刺交換をしただけの人も来る。式の当日にならないと、というか、終わってみないと、誰が来たかわからない。会場の広さに関係なく、1000人くらい来ることもある! 披露宴を行う食堂は、客が食事をとるためだけの場で、引き出物などもないので、ご祝儀は日本円で三千〜七千円くらい、親戚でも一万円ほどだそうだ。 出される料理も様々なコースがあるらしいが、韓国料理だけでなく和洋中のバイキング・ビュッフェ式が多いという。縁起物の「餅」と 末永く幸せにという意味が込められた「ククス(麺)」が、結婚式らしい料理である。

 伝統的な婚礼の習慣は廃れつつあり、これを絶やさぬようにと、無料でやってくれる所もあると聞いた。
韓国伝統式婚礼は、サムルノリ*がドンチャン派手に演奏される中、キラキラの民族衣装を着て行われる厳粛な儀式である。新婦は、朝鮮王朝時代の宮廷衣装(赤を基調とし黄金色などで刺繍がされている)、胸の前で組んだ手に色とりどりの刺繍の入った白い布を掛け、頭には王冠、頬には赤く丸いシールを貼る。新郎は、韓服を着たその上から真っ青の上着を被り、飾りベルトに朝鮮時代の王様の帽子に長靴、手には青と赤の布で出来た顔隠し。ご両人にとっては、重たく動きにくく、慣れないこともあって、婚礼の時の丁寧なお辞儀は、さぞ難儀であろう。両家の母親に木製の雁を渡しあう儀式、合歓酒の杯を交わす三三九度のような儀式、二人の婚礼の成立を高らかに天に告げる儀式・・・と、スクワットをするようなお辞儀は何回も繰り返される。そして、両家両親へのお辞儀の礼。 伝統式婚礼は、水原(スウォン)の観光名所である「韓国民族村」で見られるそうだ。

   *サムルノリ:四つの打楽器だけを使って演奏する伝統芸能を発展させたもの                                                    

つづく

20005-05-08 UP

*馬の足が濡れてこそ幸せに暮らす

*婚姻の家で新郎をなくした

*婚礼の当日に糞をたれた

*嫁をもらいに行く者がキンタマを取り外していく

*妻の悪いのは百年の仇

*夫婦喧嘩は犬の喧嘩 ・ 夫婦喧嘩は刀で水を切るようなもの

*夫はつるべ 妻は壺

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