ハングルのことわざをのぞく(二十)

 韓国の伝統建築物や食べ物は色鮮やかである。青・赤・黄・白・黒は‘五正色’と呼ばれ、その韓国の伝統的な色彩は、陰陽五行説によって選ばれた色だ。

 「陰陽五行説」とは古代中国の宇宙観で、「陰陽」と「五行説」が組み合わさったものである。
 「陰陽」は日かげ(陰)と 日なた(陽)を表し、そういう意味では二元論であるが、固定的ではなく、変化を含んでいる。黒い部分(陰)と 白い部分(陽)が動いていることを示し、二つの巴様の中にある小さな黒丸・白丸は、陰の中にも陽があり、陽の中にも陰があることを示している。

 「五行説」は、木・火・土・金・水 の五元素でもって宇宙と歴史とあらゆる事象を説明しようとしたものである。 いくつかの例として、下記の表をご覧頂きたい。

五色
五時
方角
五徳
五臓
動物
五味
五穀
五声
五音
守護神
鱗・魚類
青龍
羽・鳥類
朱雀
土用
中央
贏・人類
西
毛・哺乳類
白虎
介・無脊椎動物
玄武

 ハングル(文字)が、天・地・人(・ 丸い天、 _ 平らな地、| 立っている人)と 人の発声器官を象形化して出来たということは、文字・発音を学ぶときに知ることになるが、音に潜む陰陽の「理」を発見し、「陰陽五行説」によって創製されたことまでは、会話の本で言及されることはなかなかない。例えば、五音の‘舌’は、鋭く動きがあるので火。舌音が転がり素早く動くのは、ちょうど火が広がり燃えるのと同じで、季節は夏。分かりにくいのは‘牙’で、その説明は、凸凹していて長いので木。喉音と似ているが、固いのは木が水から生じ、形があるのと同じで、季節は春!?・・・といった具合である。

 一度に多くの色が眩く輝く様子を‘五色玲瓏’というが、五色の世界は全ての色彩を包含しているという考え方である。伝統的な建築物には、丹青(タンチョン)という模様が多く使われている。お寺の柱や軒、天井などに描かれた模様は、来世と同じ信仰の世界を表していると言われ、宮殿などには龍や鳳凰の模様など緻密に書かれているものもある。日本にも、この丹青が残っているが(鎌倉:観月堂)、残念ながら色落ちしていて当時の色を味わうことは出来ない。
 いろいろな小物の色彩に関しては、‘五正色’に、‘五間色’(紅、碧、緑、硫黄、紫)を加えた十色が基本色である。 以前のNHKラジオハングル講座のテキストに、‘作って遊んで コリアン気分’という工作のコーナーがあった。 2004.8に載っていたタンチョンをコースターにアレンジしたものに、彩色してみた。

(左:テキストの指示通りの色)(中央:寺院の写真などを参考にした色)(右:私的好みの色)

  さて、今度は‘食’の色を思い浮かべていただきたい。‘石焼きビビンバ’‘ナムル’・・・菠薐草の青、唐辛子の赤、大豆もやしの黄色、大根の白、薇の黒・・・見事に五色揃っている。

 スパスパ人間学(2005.1.20放送)では、下記の五色の野菜を紹介していた。

緑野菜 : 菠薐草、小松菜、青梗菜、春菊、胡瓜、レタス、ピーマン、キャベツ・・・
赤野菜 : 唐辛子、人参、トマト、赤ピーマン・・・
黄野菜 : 南瓜、大豆、筍、生姜、玉蜀黍、サツマイモ・・・
白野菜 : 白菜、えのき、玉葱、蓮根、大根、蕪、大蒜、ジャガイモ・・・
黒野菜 : 舞茸、椎茸、木耳、黒胡麻、黒豆、しめじ、ひじき・・・

 それぞれが、血液・血流、新陳代謝、脳、血糖値に働きかける作用を持っているということで、健康的な(ヨン様式)ダイエットとして流行ったとか・・・。2004.11.3週の健康・料理の本ベストセラーランキング(韓国)では、『色、色を食べよう!』が四位に入っていた。 まぁ、ダイエットはともかくとして、韓国では本当に食事のときに沢山の野菜を取るのだと、韓国にお嫁に行ったタレントの阿部美穂子さんも本に書いていた。 確かに、これらを毎日取っていれば、とても健康的な食事だ。ん〜、韓国の女性は、みんなスマートだったっけ? こんなに体に良いものを取っていて、どんな病気が多いのだろう? こういうデータが、まだ私の所にはない。

 色が出てくることわざは、下記のものしか見つからなかった。
ちなみに、韓国と日本は漢字語を共有しているのだから、当然、‘色’を 色彩の色 と 色事の色 の両方の意味で使う。 「色に溺れる」「色を好む」「色を使うな」など。また、「黒白をつける」「真っ赤な嘘」という言葉も韓日同様である。

2005-06-05UP

*青大将が自分のからだを褒める

*霜にあった青大将

*頭の黒い獣は人の恩を知らぬ

*十年の権勢なく、十日も赤い花はない

*黄色の雄牛の睾丸が落ちたら焼いて食べようと、火熨斗に火を入れて行き来する。

*白犬の尾を煙突に三年入れておいても白犬の尾

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