ハングルのことわざをのぞく(二十一)

 韓服(ハンボク)は、北方ユーラシアの胡服(中国北方の胡人が着る服)系統に属する民族衣装である。左袵袴褶 : 衿合わせが左前の上衣に袴(短衣と大袴)をつけるのが基本のスタイル。(我が国の上古の衣褌はこの系統) 16世紀末、李朝時代中期に、現在見られるようなパジ・チョゴリ、チマ・チョゴリが誕生した。 パジはズボン、チマはスカート、チョゴリが上着 という意味だ。

 韓国は、古来、国家経営の範を中国に求めた国であり、新羅・高麗の官僚貴族は唐・宋の朝服着用を強いられていた。李朝では、儒教国家として細かい服制が確立されたが、韓服の機能性は捨てがたく、官僚たちも私邸では韓服でくつろいでいたという。亜寒帯の朝鮮半島で暮らすには、保温性に優れた胡服式韓服が合理的だったわけだ。20世紀初頭になると、日本を通して洋服の影響が及び、男性上着の紐がボタンになったり、ポケットの付いたチョッキができ、女性はチマの丈を短くしてプリーツスカート風にするのが流行った。

 ‘緑衣紅裳’というのは、この上もない晴れ着のことで、女性が黄色や緑のチョゴリに赤いチマを着るのは、未婚の女性のしるしである。チマの下には、ソッチマと呼ばれるペチコートのようなものをつけるのだが、それを軽く蹴るようにしないと裾を踏んでしまうので、歩くのは難儀だ。結婚して夫の両親と同居する新妻は最低3日間は伝統服を着て家事をする風習もある。チマ・チョゴリ姿は色鮮やかでエレガントだが、かつて一般には、藍チマ(青系)玉色チョゴリ(水色)が主流だったそうだ。伝統韓服にはポケットがない。その代わりに、チュモニを使用していた。チュモニは、巾着のことで、丸みを帯びたもの、角張ったもの、入れるものによって呼び名が違う。(お金ートンチュモニ、煙草ータンベチュモニ) チョゴリの衿には、トンヂョンというパリッと糊の効いた真っ白な掛け衿を付ける。(本来は紙製) ポソン(白足袋)と並んで、清潔さの証である。

 男性用パジ・チョゴリは、日本の袴のようにはいかない。ウエストの1.5倍ほどの身幅の余分な布を腹の上に重ね合わせて、腰ひもで縛って形を整える。小用を足すのにも、足首がテニムという紐で縛ってあるので、一苦労である。

晴れの日の衣装 チマ・パジ・チョゴリ
慶事の衣装
改良韓服

 色彩に関しては、前章で書いた‘五正色’‘五間色’が基本であり、組み合わせにより、様々な意味を持つ。 また、五正色の黒の代わりに、‘緑’と‘ツツジ色’(鮮やかなピンク)を加えた、六色をよく使用する。この六色を同じ幅で配列したストライプを‘セクトン’と呼ぶ。

 男女共に、外出する際は、チョゴリの上に‘トゥルマギ’を着る。昔の女性はこれを頭から被って、顔尾を隠していた。                                                                       

チョットルのチョゴリの袖はセクトン
トゥルマギ
生活韓服

 伝統韓服も、日本の着物と同様、正月などの祝祭日や冠婚葬祭などの特別な場合にしかお目に掛かることが出来なくなってきている。(逆に、そのために華やかさがいっそう増す傾向にあるそうだ) とはいへ、韓服への愛着は性別を問わず、まだまだ根強いものがある。
 ‘改良韓服’と呼ばれる、街着感覚のものが登場してきた。今まで韓服の常套色だった赤・緑・青の原色の組み合わせを排して、パステルカラーやモノトーンのシックなものも多く見られる。素材は、木綿や麻の風合いを生かしたもの、草木染めされたものなど、多様になってきた。男性服は、ジャケット、作務衣風、女性服はゆったりしたワンピース(ペチコートはいらない)のようなものだ。
 ‘生活韓服’は、行動的でシンプルにデザインされた、ちょっとオシャレな普段着である。これらは何れも、一見洋服に見えるけれども、襟ぐりや袖が韓服独自の緩やかなカーブを描いており、ボタンで留めるところを隠しボタンにして、その上にメドゥプ(伝統的組紐・アジアンノット)を飾ったりしてある。伝統を守りながらも、洋装の長所を取り入れてより美しい服を創作する、人気デザイナーが活躍している。

 ニコラス・ケイジ夫妻も大のお気に入りの韓服。この美しい韓服を来て、改めて結婚披露宴をしたそうだ。 一着持っていれば、韓日交流に一役買う日もあるかもしれない。

2005-06-19UP

*服が翼だ

*服は新しいのがよく、人は昔なじみがよい

*一日食事をしなかったことは分からなくても、襤褸を着ているのは分かる

*服を着た乞食はもらって食べるが、服を脱いだ乞食はもらって食べられない

*衣服が足りずに偉い人はなく、衣服が足りて偉くない人なし

*格好付けようとして 凍え死ぬ

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