ハングルのことわざをのぞく(二十六

占い 1

 いつの世も不安と悩みの渦の中で、占いは人々と共にあった。それは日本でも韓国でも同様である。血液型占い、占星術、四柱推命などは、韓国でもポピュラーで、日本で流行った動物占いもちゃんと海を渡っている。「冬のソナタ」でも、タロット占いをしてもらって示されたミニョンとユジンの運命のカードは、‘(運命の)車輪’だった。公園にも各種の占いの店が出ていて、若者から老人まで人気のあり、占いは現代文化の一つとして受け入れられている。

 韓国の伝統的な占いとして、「風水」が挙げられる。
形から見た家の建て方・インテリアの配置や色といったものを見る「家相」、「墓相」が、日本でいう「風水」のイメージである。‘運が良くなるためのマニュアル’という意味では「風水」であるが、そんなに辛気くさいものではない。本来の「風水」は、大自然のパワーを読み、それを生かそうとする学問であり、‘大気の気’が及ぼす影響を上手く読み、受けて、心や体にパワーを取り入れ、運を呼ぼうというのである。 韓国の風水は、祖先が眠る墓地の立地条件(明堂)が子孫の吉凶禍福に影響を与えるという考えから、特に墓地風水が盛んである。(二十五で述べたように)

 神や霊魂と交流して、その助けを借りる「シャーマン」による占いもある。彼等は古くから存在し、病気の治療なども行う、民間宗教者である。「ムソク」巫俗とか「ムーダン」巫堂というのはその文字のごとく占いをする者であり、伝統的な儀式や歌謡に関する知識を持っているとされ、現在でも伝統文化として一定の地位を認められている。

 ムーダンより手軽に(?)利用されている民間宗教者に「ポサル」菩薩がある。ソウル市内でも住宅街や団地の一室などで開業している。最近では、ホームページを開設していたり、電子メールで相談に応じたり面談の予約を受けたりしているし、テレビに出演するようなポサルもいるという。

 あまり知られてはいない存在が「パンス」である。僧侶ではないが僧形をした盲人で、占いや加持祈祷をはじめ、呪詛や祈雨など各種の宗教的な役割を、長いあいだ果たしてきた。例の光海君の様々な暴挙の中に、パンスが関わった“癸丑獄事件”1613年がある。その時、パンスが行ったとされる呪術の数々は歴史書にも記録があるそうだが、目の見えない者でなければ出来ないように思われるほど残酷な動物の生贄の儀式もあり、私はここで文字にすることを憚る。
 上記は極端な例である。「択日
吉日の占ト」を行っていたパンスが多く、有能な者は「命課盲」として、朝廷に採用されていた。また古典小説『春香伝』などに、吉凶を占ったり加持祈祷をするパンスの姿が描かれており、広く民間に浸透していたことが分かる。近代期まで巫堂ムーダン同様に活動していたパンスだが、解放後その勢いは衰えていった。現在もソウル北郊の村にパンスが集まる一画があるそうだ。

 もちろん、霊との交流をする宗教者だけでなく、‘占い’だけをやっている「占い師」も多い。主流は干支占いや人相・手相を見る観相術だ。その知識の源が中国思想にあることを意識して、『東洋哲学』『哲学館』などの看板を掲げている。哲学者が商売をしているわけではないのだ。人相占いの料金が高いと言って値切ったら、顔の半分だけ見てくれた、という話がある。なんだか大阪っぽい!?

 最近の流行は、「サジュカペ」。サジュ=四柱、カペ=喫茶店、で、四柱推命をやってくれる占い喫茶のことだ。普通の喫茶店と同じように、飲み物だけを頼むことも出来る。占いの先生は、喫茶店の中でお茶を飲んだり新聞を読んだりしていて、お客はウェイターが注文を取りに来たときに、占って貰いたいときは、頼む ということらしい。占う内容は、「恋愛運」「試験運」「財運」「健康運」などに分かれている。結婚相手との「相性占い」は、料金が高いのだが、結婚をする女性は、必ず、母親と一緒にこの相性占いをしに行くそうだ。(私の知人も、行っていた。その結果で、悩む人も少なくないという。) そして‘良し’となれば、四柱八字の占いで結婚の日取りを決めて戴くことになる。→(十八)

2005-10-09UP

*魂だ神だ という

*ムーダンの霊神なのか

*ムーダンは自分の厄払いが出来ず、盲人は自分の死ぬ日を知らない

*クッを頼まれたムーダン、供養を頼まれた僧

*クッが済んでから無駄にチャングを鳴らす

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