NEWCOMERS
April, 2005

今月は“NEWCOMER”がいないので、
2004年末に我が家にやってきたために“NEWCOMER”になりそこなった一枚を紹介。

The Melody At Night, With You(1999)
Keith Jarrett
1 I Love You Porgy
2 I Got It Bad And That Ain't Goodr
3 Don' Ever Leave Me
4 Someone To Watch Over Me
5 My Wild Irish Rose
6 Blame It On My Youth
7 Meditation
8 Something To Remember You By
9 Be My Love
10 Shenandoah
11 I'm Through With Love
 キースについてはすでに触れたことがある(File 7)。このアルバムは昨年暮れ、何気なく入ったCDショップで発見したものである。
 キース・ジャレットは今でもよく聞いているのだが、考えてみれば手元にあるのは10年以上もまえのものばかりである。新しいものに属するのは、キース・ジャレット(p)、ゲイリー・ピーコック(b)、ジャック・デジョネット(ds)のトリオの一連の「スタンダード」ものである。これでキースに望むものは何もなくなったような気になっていた。ジャズ専門誌を読んでいるわけではないので、以後の彼の活動については何も知らなかった。
 店でキースのコーナーを見ていたら、この“The Melody At Night, With You”という魅力的なタイトルが目に入った。1999年の「SwingJournal選定のゴールドディスク」とあった。曲目を見ると“I Love You Porgy”やら“Someone To Watch Over Me”やらのスタンダードの名曲が並んでいる。「また例の……」と思ったのだが、よく見るとキース・ジャレットの名前しかない。つまりソロでスタンダードをやっているのである。キースのソロといえば、まず一連のソロ・コンサートが思いつく。ソロ・コンサートはほぼ完全は即興演奏である。キースがソロでスタンダードをやるとどうなるか? 興味をひかれてさっそく手に入れた。
 帰宅するとすぐこのアルバムを聴いてみた。ジョージ・ガーシュインの名曲からはじまるこのアルバムを一言で表現すれば「静寂」である。キースの技量が生み出す「静寂」には何度も触れたことがある。しかし、このアルバムの「静寂」は何か内側からしみ出てくるようなものだ。かなり衝撃を受けた。
 あの情念のうねり、感情のほとばしりはどこにいったのだろう。いすから立ち上がり、声を立てながら演奏する彼の姿が目に焼き付いている私としては、どこか違和感を感じてしまう。明らかに私の好きな「キース・ジャレット」とは違う。もちろん、演奏そのものは本当にすばらしい。評論家だったら、「抑制のきいた……」とか「耽美的な……」といった表現を使って褒め称える演奏かもしれない。しかし、この私の知らない「キース・ジャレット」を私は好きになれるだろうか。今はちょっと自信がない。

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