ハングルのことわざをのぞく(十一)

 なぜ今韓国ブームなのだろうか? 以前、女性にとって韓国と言えば、グルメ、エステ、ショッピングが三種の神器だった。TBSラジオ「噂の調査隊」(2001.11.15)によれば、1位.グルメ55.2%、2位.ショッピング16.6%、3位.映画14.4%、4位.エステ13.7%というのが、韓国の人気の理由のベスト4である。

 それまでより多くの日本人が、政治以外で韓国に目を向けるようになったのは、99年の映画「シュリ」のヒットがあったのも一つのきっかけだろう。 2000年「JSA」、01年「猟奇的な彼女」と映画のヒットは続いた。そして、02年日韓共催のワールドカップ。そのサッカー熱が冷めかけたところへ?飛び込んできたのが、「冬のソナタ」だった。

 今盛んにDVDが発売され、放映されている韓国ドラマを遡ってみれば、01.「美しき日々」「ホテリアー」、00.「秋の童話」「イヴのすべて」・・・と聴いたようなタイトルが並ぶ。四天王と呼ばれるスター達を中心に繰り広げられたドラマの数々ではあるが、これらはドラマ平均視聴率ではトップ10には入っていない。「オールイン」が33.7%で6位に食い込んでいるくらいだ。かのぺ・ヨンジュン主演の「初恋」65.8%が最高視聴率記録として残っている。韓国の人たちが好んで見るのは、日本で言う時代物や家族ドラマのようである。

 ドラマのメイキングについては、韓国スターの来日の際のインタビューでだいぶ有名になった。韓国ドラマは夜がメインで、放送は週2回が基本。ギリギリまでキャストが決まらなかったり、台本が当日手渡しのこともある・・・などということは、ご存じの方も多いだろう。人気ドラマは、放送延長になるし、「登場人物を死なせるな」「誰と誰を結ばせて欲しい」といった嘆願メールが殺到したりすると、その要望が反映される。これはドラマの制作スピードと放映のスピードがほぼ同時だから可能なことなのだ。
 2年まえ(2002)11月から、地上波キー局の3社で、放送されるテレビドラマに等級制が導入された。内容によって12歳以上、15歳以上、19歳以上視聴可というように、等級が決められる。不適切な言葉遣い、扇情性、暴力性などが判断基準となる。夜のドラマは、だいたい15歳以上視聴可のようだ。同じドラマでもその回ごとに等級がつけられているので、昨日はダメだったけれど、今日は見られるというようなことが起こったりする。

 私たちが見る韓国ドラマには、幾つかの欠かせない要素がある。出生の秘密、交通事故、難病、四角関係、親子の葛藤・・・その中でも出生の秘密は、儒教的な血縁関係の中では最も決定的な「不幸」なのだ。
 日本でも70年代半ばに、大映ドラマ「赤いシリーズ」(迷路・疑惑・運命・衝撃)がヒットした。今では昼メロでしかお目にかかれないような、怒濤の人生を歩む主人公のドラマだった。それに、韓国ドラマは似ている。ディフォルメされた世界は、少女漫画やハーレクインロマンなどにも通じるようなストーリーである。「王子様」が現れて、夢を叶えてくれる。(あるいは、叶えてくれない) 女性が求める世界が展開していく。そこへ、自己を投入し代理満足を得る。(我が身の不運を嘆き共感する) 韓国ドラマファンは、それにハマり陶酔していく。ん〜、分からないでもない。(いや、分からないなぁ) とにかく、「ドラマはドラマチックでなければならない」という考え方は、王道をいっている。

 「韓国ドラマ愛の方程式」という本がポプラ社から出ている。ハングル講座でおなじみの小倉紀藏先生の本だ。この本を出版される前に、ハングル講座で下記のようなドラマの法則を教えて下さっていた。

 韓国式〈愛のドラマ〉の法則

 1. 愛の定義を下す
  「愛とは何か」という理屈を言い合う。「僕の考える愛はこうだ。その定義に照らせば、
   あなたの愛は間違っている。それを正せば、必ず僕を愛するようになるはずだ」

 2. 道徳的に優位に立つ  人間関係の主導権を握るのは、「道徳的に優位な人間」だけ

 3. 道徳的に問いただす
   優位を争い、自己の道徳性を声高に主張し、相手がいかに道徳性の欠けた存在であるかを問いただす。

 4. 脅す 
   武器や暴力でなく、あくまで言葉を使って相手を心理的に脅す。どんなに苦しい立場に立っても、
   決して自らの主体性的な姿勢を崩さない。自分に関心を持って欲しいという意思表示。

 5. 甘える
   主体的に振る舞おうという態度が無惨にも挫折したとき、一転して「甘え」の態度をとる。
   自分の直面している苦痛・苦労が並大抵ではないことを、公に示すためにワザと大げさに訴える。

 6. 人生論を披瀝する
  「人生とはこうゆうものなんだ」と相手を説得するのが好き。人生談義には
  「〜しなくてはならない」という言葉が多用される。

 7. 煩悶する
   人生に煩悶もんしない人物に、視聴者は感情移入が出来ず、コレがないと気の抜けたビールの
   ようにドラマがおもしろくないと感じられるようだ。

                         (ハングル講座テキスト2003.9より抜粋・要約)

 なるほど、と思う。

 「冬のソナタ」のホームページのアクセス件数が、1000万を超えたと聞いている。30年前には、ほんとうに「近くて遠い国」だった韓国との距離を、ヨン様は軽々と縮めてみせた。この微笑みの貴公子に感謝しよう。

*情から怒りが出る

*情それぞれ 欠点それぞれ

*来る情があれば 行く情がある

*大便をしに行くときの心は 大便をして帰って来るときの心と異なる

 

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