ハングルのことわざをのぞく(八)

 アテネオリンピックが始まった。スポーツはやらないが、見るのは嫌いではない。と、いっても、私はスポーツを語れない。野球は好きだし、応援するチームもあるが、知らない選手が沢山いる。プロレスやK1の試合を瞬きもせずに見入ることもあるが、技の名前を全部言えるわけではない。サッカーに至っては、無知に等しい。従って、これから書くことは、付け焼き刃のパッチワークである。


 スポーツに関して、「韓国は強い」という印象がある。それは、各分野に於ける選手のめざましい活躍による。男子女子ゴルフ、女子バスケ、女子サッカー、野球、男子サッカー・・・。気がついたらスポーツ強国になっていた韓国だが、何故、また、いつ頃から強くなってきたのだろう?


 1966年、泰陵(テルン)に、国家代表のスポーツ選手を鍛えるための、ナショナルトレーニングセンターがオープンした。約31万?Fの土地に、500人収容できる合宿所、約750の器具が揃っているトレーニングジムなど、20余りの施設を有する、世界的にも希な大規模なトレセンである。同年のワールドカップで北朝鮮がベスト8入りし、国際的にその威信を高めたため、韓国としては、国際スポーツ舞台で‘北’に勝ち、金メダルを獲得することが至上命題となったのだ。素質のある選手を集めるため、スポーツをしていても大学に行けて、生活もできる制度を作っていった。高校の全国大会でベスト4以上に進出した選手には、特待生として大学進学の資格を与え、オリンピックメダリストには生涯年金、また、そのメダリストとアジア大会の優勝者には兵役免除・・・というように。そして、この20年間にスポーツ強国として成長してきた。


 日本では、プロ、あるいはトップクラスの選手を目指して学校の運動部に所属している人もいれば、趣味の延長でやっている人もいる。しかし、韓国では前者しか存在しない。従って、スポーツに人生をかけている。そこには、楽しむスポーツは存在しない。

 勝利至上主義は、レギュラーにしてもらえない恨みや過酷な練習への反発が動機の放火事件、レスリング・柔道選手の無理な減量による死亡事故などをもたらした。審判、監督、父兄の贈収賄事件も珍しくない。スポーツレベルの急成長の陰には、いろいろな問題も含まれている。


 さて、アテネオリンピック。“虎の穴”テルン選手村での合同合宿で掲げられたスローガンは、「アテネ五輪で過去最高13個の金メダルを獲得して再び世界のトップ10に入ろう!」だ。

 アーチェリーは圧倒的な強さを誇り、男子女子ともにメダル獲得が確実視されている。バトミントン混合ダブルス、男子ホッケー、ハンドボールも、金メダルがねらえる実力があるそうだ。


 サッカーの話は外せない。“アジアの虎”と称される韓国サッカー。誰もがサッカーの話題に精通している。サッカーはいつも韓国の歴史と共にあったからだ。1892年、イギリス軍艦のクルー達が忘れていったサッカーボールを、地元の子供達が拾い、蹴り始めたことに始まり、戦前の日韓併合の悲しい時代には、サッカーが民族の鬱憤を晴らし、戦後は、アジアで好成績を残す代表チームが人々に希望を与え、彼らを応援することで国中が一つになれたのだ。韓国の人々の潜在意識の中には、サッカーに対する熱い愛着心がある。“民族の自尊心“と形容されるサッカーである。


 そして、テコンドー。足と手を使った「蹴り」「突き」などの技を駆使する総合格闘技。シドニーオリンピックから正式種目に加わった、言わずと知れた韓国の国技だ。テコンドーの精神は、一、礼儀、二、廉恥 三、忍耐、四、克己・・・。(あぁ、日本で少しずつ無くなっていっているものだぁ。)技は、前蹴り、後ろ蹴り、かかと落とし、回し蹴り・・・。その美しさは、ステップ、足技、連続した蹴り、そしてスピード感にあるという。

 テコンドーの試合は、テレビでは滅多に見られない。予選・決勝は29日。私達は、岡本依子選手を応援しながら、観戦することになるだろう。


*末っ子がシムルをするよう

  シムル:端午の節句に男の子が遊ぶ民族遊戯が進化した相撲。

  1983年にプロ化され、国民的な娯楽となってる。

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